大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)6158号 判決
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〔判決理由〕三、損害
(一) 逸失利益 一、二九二、二八〇円
<証拠>を綜合すると、網野鶴松は、本件事故により、昭和四二年一一月二八日午後八時四〇分ころ、頭部外傷(脳挫傷)により死亡したこと、網野鶴松は 死亡当時六二才で、長年にわたり綱干で漁師をしていて、木造の舟二隻を所有して漁業をし、冬期はのりの養殖をし、漁業のひまなときには他家に手伝に出て一日に二、〇〇〇円の収入を得て、年間に少くとも五五〇、〇〇〇円位の収入を得て、長男の原告数幸、西勇の原告昌広らとともに生活していたこと、網野鶴松は健康で将来も漁業を続けるつもりでいたもので、七〇才をこえても漁師をしている者もあることが認められ、右認定を左右しうべき証拠はない。以上の事実によれば、網野鶴松の就労可能年数は七年、生活費は収入の二分の一と考えられるから、同人の死亡による逸失利益を年毎のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、別紙計算書(2)記載のとおり一、六一五、三五〇円となる。
<証拠>を総合すると、本件事故現場は東西に通ずる車道の幅約一二メートルの車道と歩道との区分のある道路上で、右道路の北側と南側にはそれぞれ幅約三メートルの歩道があり、車道には中心線が設けられており、東方に五〇メートル以内のところに横断歩道があり、北側、南側とも車道と歩道との境界には高さ約一メートルの鉄橋が設置されているが、事故現場の南側にはガソリンスタンドがあつてその入口となつている幅約一六、二メートルの部分には鉄柵はなく、右道路は歩行者の横断禁止の指定がされている場所ではなかつたこと、附近の最高速度は毎時四〇キロメートルと指定されており、事故当時小雨が降つていたが照明は明るく、前方約五〇メートルに存する物および人体は識別できる状況であつたこと、被告は、加害車を運転して西から東に向つて時速約四〇キロメートルで中心線より約一、四五メートル北側を進行し、約一〇、五メートル左前方に車道の左端を先行していた普通乗用自動車のほかには先行車はなかつたが、左側後方からタクシーが加害車を追い抜いて右に転把して前方に割り込もうとしたのを認め、ハンドルを右に切つた際、始めて約四、二メートル前方の道路中心線附近に立止つている網野鶴松を発見し、急ブレーキをかけるとともにハンドルを左に切つたが及ばず、加害車の右前部を同人に衝突させて約三メートルはねとばしたこと、網野鶴松は、南から北に向つて道路を横断しようとして中心線より約〇、五メートル北側の地点で東行の車両の通過を待つて立止つていたとき本件事故が発生したことが認められ、右認定を左右しうべき証拠はない。以上認定の事実によれば、被告は、加害車を運転中左方の車両に気をとられて前方道路中心線附近の注視を十分していなかつた過失によつて被害者の発見が遅れたため、本件事故を発生させたことが認められるが、他方網野鶴松にも附近に横断歩道があるのに横断歩道以外の部分で、交通が激しく、事故防止のために歩道と車道との境界に鉄柵が設けられている場所を歩行横断しようとした過失が存したものと認められ、損害額算定についてしんしやくするべき原告と網野鶴松との過失割合は八対二とするのが相当であると認められる。
従つて網野鶴松の逸失利益の損害は一、六一五、三五〇円の一〇分の八の一、二九二、二八〇円となる。
(山本矩夫)